どこが違うのか

ゼロの焦点が始めて映像化されたのは1961年に公開された劇場作品となっています。言うなればこちらの作品が元祖という風に表現して問題ないでしょう。ではやはり2009年作品と比べた場合にはこちらの作品の方を指示する人が多いのか、というのもやや異なるでしょう。この時代の作品はまだモノクロ放送となっているので、カラー放送が既に当たり前となっている現代技術の前時代的なものとなっているので、そういう意味では使用する演出なども異なってきます。

ではそんな1961年に公開されたものと、2009年版のモノとの違いについて考察をしていきましょう。

ナレーションが入る

まず最初の違いとしては主人公である禎子が物語全編を通して『ナレーションを組み込んでいる』というところでしょう。ナレーションを入れているのはもちろん初期バージョン作品に導入されていますが、これは禎子が物語の主軸から外れているために忘れられないようにするための手段として用いられていると私は判断します。物語の中心的な人物である禎子ですが、過去の話として考えたとき、禎子はその他の登場人物と比べたときには明らかに蚊帳の外の存在となっているのです。もちろん失踪した夫である憲一の妻ということで無関係ということでもありませんが、それでも禎子本人は憲一が過去にどういう生き方をしていたのかというのを全く知らないため、どうしても存在感が作品の中で薄れがちになってしまいます。もちろん原作においてもそういう風に忘れがちになるキャラクターというのは存在していますが、さすがに主人公を忘れてしまうのはいけないためだからこそナレーションを前編に導入することで禎子というキャラクターを主軸にした物語を展開していると表現した買ったのではないでしょうか。

性的行為は厳禁

この頃の映画の特徴としては、生物としての本能的な行動である性行為を表現していけないと言うタブーも暗黙の内に存在していました。元々映画は政府などがプロパガンダで利用することもあった宣伝材料だったことも大きな一端でしょう。そのために現在では平然と男と女の肉欲まみれなシーンを垂れ流していますが、1960年代にはそういった放送を取り入れる事は厳禁でしたが、なんとそんな時代にキスシーンだけでも導入されているのです。そういう意味ではこの時代におけるどの映画作品の中ではかなり異色なものだといっていいかも知れません。

時間軸が異なる?

これは確かなことは分からないのですが昔と今の作品においては時間の流れが異なっていると思います。2009年版での時間軸に関する表現はないためはっきりしたことは言えませんが、1961年版に関しては夫の憲一を殺したのは田沼久子ではないだろうかと疑うのですが、その彼女が自殺死体が出たことについて納得がいかないまま一年という月日が経過した後に、再び金沢の地へと禎子は訪れるのです。ここまでの時間を費やすことになった理由としては、やはり禎子が事件に関して謎解きというものをスムーズに行うことが出来ないという点を考慮してなのかもしれません。よくアニメなどで即座に謎を解いて事件解決する棒高校生のような頭脳を持っていることはまずないので、そういう意味ではリアリティがあるといえるでしょう。

犯人との直接対決

個人的に元祖とリメイクとの違いとして最も大きいのは、やはり禎子と佐知子の直接対決が描かれているということです。もちろんこの対決が描かれているのは1961年の作品になっていますが、この時代におけるミステリー作品には御馴染みの崖を舞台にした犯人と主人公の直接対決があります。毎回毎回思うのですが、こういうミステリー作品においてはどうして崖なんでしょうかね、いつも疑問に思っていたのですがそれだけ緊迫感溢れる状況を演出するということでは最適な場所なのでしょうか。

ただ個人的に思うのが禎子と佐知子との対決と言いますが、基本的に二人のスペック的なものを考えると明らかに禎子の方が不利すぎて負けてしまうのではないでしょうか。禎子は基本的に世間知らずのお嬢様、佐知子は貧しい家庭で弟を養いながら娼婦として生きていた過去を持って、信念を持ってまっすぐ前を向いて生きていました。これだけで人間的にも、人生的にも異なりすぎているといえるでしょうね。そんな二人の対決の勝者は勿論禎子なわけです、どういうことなんでしょうか。

佐知子の自殺を禎子と儀作が見送っている

ラストの表現についても全く異なります、リメイク版においては佐知子は全ての事実を知った禎子に糾弾されながらも一人その場から離れて、人知れず小船に乗って衰弱死する結末となっています。元祖でも彼女の最後は変わらないのですが、そうなる過程になることを把握しておきながら黙って傍観している人間がいるのです。その人物とは禎子と佐知子の夫でもある儀作なのです。わざわざ死に行く人間を見送るというのも物凄い状況のようにも感じますが、何となくお決まりのパターンとなってしまっていったのかもしれません。

リメイク版の主人公は佐知子?

リメイク版の良き点としては、やはり名女優として伯が付いた中谷さんと木村さんでしょう。元祖の方では終始禎子を主人公の軸として展開されていきますが、リメイク版の方では佐知子を全面的に推し出した内容となっているので、この点ではやはり大きく異なるところでしょう。もちろん元祖においても佐知子は非常に目立っていましたが、リメイク版においてはそんな佐知子の葛藤や苦悩、そして野望などをむき出しにした行動力などは見るものを離さない迫力をもっています。それもこれも演じている中谷美樹という女優が怪演とまで評していいほどの役者力を見せているからでしょう。そういう意味では顔も綺麗で演技もできるというのは最強かもしれませんね。